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坂井君とは仕事中は普段と変わらず接している。 メールもたまにしてるけど、答えを出していないことに罪悪感が大きくなる。 「坂井君は好き?」 「好きだよ」 「じゃあ榊原翼は?」 首すら縦にも横にも振れない。 「好きだから言葉に出来ないんじゃないの? 素直になれって私も人のこと言えないけど、言うと楽になるよ」 分からないってずっと思っていた。 でも、それじゃなんの解決もできない。 「嫌いじゃ、ない。恋愛対象として好きかどうかは別として」 「そっか。嫌いじゃないから悩んでるんだ。まぁ結華の性格上、嫌いになったらとことん嫌いだもんね」 そういうのは主に上司に多い。 すぐに嫌いになるわけじゃなく、どうしても合わない部分は仕事上ある。 「梓のほうが嫌いになるまでが早いじゃん」 「私は間違ったことは言わないし。それにあーだこーだ言ってくるやつが嫌いなだけ」 携帯からマナーモードにしている震動が伝わる。 榊原翼から短いメールが届いた。 「なんて?」 「おやすみって」 さっきのやり取りに関しては何も書いてない。 メールは好きじゃないのかこれが初めて。 変な感じだ。 「嬉しそうね?」 「……ただメール見てただけだよ」 「じゃあ気のせいみたい」 ニヤニヤしてる梓を置いておいて布団に入った。 「私も言うからさ。結華も頑張って」 暗闇の中、梓が小さく呟いた。
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