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……おかしい。 なんで、私がこの人と向かい合って座って珈琲飲まないといけないんだ? 時間は遡り、朝の挨拶すらもすっ飛ばして声をかけてきたのが、ろくに会話したことがない中野君。 「昼飯付き合って」 返事をする前にスタスタと行ってしまった背中を見てポカンとするしかなかった。 梓に断りをいれて、全く会話がないまま黙々と食べる昼食は気まずくて視線が痛かった。 人気があるのは本当らしい。 ふたりとも食べ終わったが、食後の珈琲まで会話はゼロ。 中野君とはいつも坂井君がいて挨拶する程度だから話題もない。 誘っておいて、これで終わりなんてないよね? 「神白」 思っていることが顔に出たのか声をかけられた。 名前覚えていたのが、失礼ながら意外だった。 普通においとかお前とか言いそうなタイプ。 「なによ」 同期だから、ろくに話したことないけどタメ口。 「和希(かずき)とどうなってんの?」 「坂井君?」 下の名前で呼ばないから一瞬分からなかったけど、中野君が名前で呼んでいるのを何回か聞いたことある。 「妙なウワサもあったし、俺は男と一緒にいるの見たことある」 「だから?」 「フラフラすんならさっさと決めろ。こっちがイライラする」 淡々と怒りも混じりあった声が、私から周りの音を消していく。
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