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「中野君に関係ないでしょ」 坂井君の名前が出た時点でこうくるとは思っていた。 動揺も表情にも出したくない。 「へー言うね。ウワサがあったことで和希がどんな思いしてたか知ってんの?」 「……」 それだけは何も言えない。 ウワサがあった時も坂井君は変わらなくて、会ってもその話題には深く触れなかった。 「お前がそんなだから和希はどうすることもできない。止めればいいのに、お前のこと悪く言ったこと一度もないし」 呆れた表情。 こんなに話す中野君を初めて見る。 「……聞いてんの?」 「聞いてるわよ。いつも無口だったから驚いただけ」 「話す必要がないときは喋るだけ時間の無駄だ。女はギャーギャーうるさい」 「あぁそう」 こちらの女嫌いのウワサは本当みたいだ。 話しているのに目は合わさない。 真っ直ぐ見るときは、私が目をそらしたくなるとき。 「俺のことはいいんだよ。お前はどうすんだよ」 「あんたに言われなくても考えてるわよ」 「だったら、さっさとケリつけろよ。めんどくせー女だな」 カチンときた。 坂井君ならともかく、中野君に言われたくない。 「うるさい。関係ないやつは引っ込んでなさいよ」 「お前が和希を巻き込んでなければ言わねーよ」 「あぁもう! 悪かったわね。私が悪いのよ」 「……尚樹?」 「……結華?」 いつの間にか、坂井君と呆れた表情を浮かべた梓がいた。
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