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「中野君に関してはあんまり気にしないほうがいいわよ。いつもあんな感じだから」 私よりは中野君のことを知っているみたい。 でも、正論なだけあって強がることしかできなかった。 「それにしても、坂井君思いよね。普通はあそこまでしないと思うけど」 「よっぽど、ムカついてたんじゃない?」 「それにしてもね。女嫌いっていうのもあるし、もしかすると」 「ねーよ」 「あら残念」 「何が残念だ。変な想像するな」 「だってねぇ」 「ったく。神白。忘れ物」 投げられたのは財布だった。テーブルに置いたまま気づかずに離れてしまったようだ。 「どうも」 「ちょっと中野君。結華苛めないでよね」 「は? 別に苛めてないだろ」 「結華が凹んでるじゃない」 「自業自得だ。じゃあな」 最後にキツイ一言を残してどっかに行った。 ポケットから僅かな振動。 坂井君からの着信とメールがきていた。 とりあえず、電話してみる。 「もしもし」 「ゴメンね。気づかなかった」 「いや、いきなりでこっちこそ悪いな。今日、尚樹となんかあった?」 結構キツイ言葉をグサグサと貰ったけど、中野君のせいじゃない。 「別に?」 「そか。あいつ、良くも悪くも言うことは言うから、最初誤解されやすいんだ。悪気はないから」 「そうなんだ」 あれで悪気がないなんて、よっぽど自分に自信があるのかな。 少しでもその自信をいただきたい。 なんて、中野君からもらうのも嫌だけど。
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