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答えを、出すとき。 頭が色々な考えがグルグルしていて、ろくに飲んでいないのに気持ち悪い。 「坂井君のこと、いつも凄いなって尊敬してた。私にないものたくさん持ってる人」 とにかく、感じたこと。 思ったことを言葉にする。頭がまわらなくて自分でも何言っているか分かんないけど。 「同期としてアドバイスしてくれたり相談にものってくれて愚痴まで聞いてもらって。だから、正直言われて戸惑ってる」 「神白分かりやすいからな」 フッと笑顔になる。 「これからは同期の坂井和希じゃなくて、ひとりの男としての坂井和希を知って欲しい」 知ってるつもりだった。 でも、実際は坂井君のこと全然知らない。 こんな坂井和希は知らない。 「……坂井君のこと友達以上に見たことなくて。むしろ私なんかより梓とか、もっと可愛い子が」 「神白」 混乱していると、静かな声で遮られる。 「聞いてなかった? 俺は神白結華じゃないとダメなんだよ」 呟いた坂井君。 嬉しさと、どうしようもないぐらい胸に広がる真っ直ぐな想い。 それに応えるほどの人間じゃない。 だって、さっきから嫌なぐらいにチラつく人がいる。 「……ゴメン。やっぱり私、中途半端な気持ちで坂井君の隣にいられない」 「……中途半端ってことは気になるやつがいるんだ」 ゆっくり首を縦にふる。 苦しくて、涙が溢れそう。 でも、絶対に泣いたりしない。 泣いちゃいけない。
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