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(…何……誰か……)
強烈な眠気の中社長は携帯を取り出すが、画面を開く間も無く意識は途切れた。
深い眠りに落ちた社長の前に、先ほどの男が物陰から姿を現す。
「すいません。社長さん」
小さく呟くと手を社長の頭に乗せる。
数秒後、不意に、社長は消えた。
身に付けていたものだけが残った。
その代わりに、男の肩の上には社長が手にしていた物と同じ宝箱が現れる。
ふわふわと宙に浮き、口を開けたまま。
残された衣服も、男が触れた途端に消える。
そこに人が居た形跡は何一つ残らない。
いっそう静かになった裏通りに満足したか、男は宝箱のふたを閉めて留め金を留めた。
「すいません」
男はもう一度、呟く。
その声は仮面のせいで、外には響くことは無かった。
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