悲しい程長い夜

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「みいな。誕生日何が欲しい?」 由人がバイクを磨きながら急に問い掛けた。 「…覚えてたの?」 「何だよそれ!当たり前だろ?」 まさか由人と二回目の誕生日を迎えようとしてるなんて、昔からは想像もつかないことだった。 欲しいもの…。 「いらない。何にも欲しくないもん。」 「うそつけ。正直に言えって。」 由人は私の頭に腕を絡めて笑った。私は由人の腕の隙間から右手にはめた指輪に目をやった。 私には…これさえあれば十分。 その時、由人の服から携帯の音が響いた。 「誰だよー。」 由人が面倒くさそうに携帯を取り出した。 「……っ……」 携帯の画面を見たとたん、由人の言葉がつまり、顔色が変わった。 …?…由人? 「…あ…前の…彼女から…。」 一瞬にして二人の空気も変わった。
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