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「お、悠也。お前もいたのか?」
「チョイとコイツらのメンテ中でね、手が放せなかったもんで。
ま、話はちゃんと聞いてたけど」
少し長めの綺麗な金髪、耳も目も隠れてしまっている。
少し無骨な黒縁眼鏡を掛けて鬱陶しそうに前髪をかき分けると、同じ様に顔をのぞき込まれる。
「へー、コレがねぇー」
む、失礼な。妙にニヤケて好奇に満ちた表情がさっきとは違ってイラッとする。
「これじゃない、姫川有希って名乗ったでしょ」
「あらら、威勢もよろしいこって。俺は樽本悠也。ま、余裕があるなら覚えて頂戴」
それだけ言うと、机に置いてあった黒いカチューシャで前髪を全て上げてパソコンへと向かう。
「あぁ、俺は許可だから。てか、部長が選んだんなら反対はしないよ」
忙しなくキーボードを叩きながら、首だけこっちを向けて言う。
おぉ!ブラインドタッチだ!
じゃなくて、本題本題。
「ちょっとそこの……」
……今思った。誘拐犯の名前すら知らないよ、私。
「俺か?俺は九条怜だ」
「九条先輩、ここはどこで、何で私が連れ去られたのか、教えて下さい」
「良い質問だ。正直、そろそろ聞いてくれないかと待っていた所だ」
じゃあ有無を言わさず誘拐する前に、最初っから説明して下さいよ。
聞いても無視してたクセに。
「馬鹿者、第一印象は大切だ。そこで間違えればルートに入れなくなるかも知れないんだぞ」
ルート?それより何で心読まれてるの?
「有希は顔に出やすいからな」
「……そうですか」
単純だと言われているようで、何だかショックです。
「で、質問……」
「あ、そうだったな。
ゴホン……ようこそ姫川有希!我らが執行部へ!」
……そんな良い声で両手広げられても。
真くんは楽しそうに横で拍手してるけど。
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