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「リレー小説、か。やったなぁ」
当時同じ小説にハマってたリツコと俺とで、作っちゃえって始めたリレー小説。交換ノートの一番下に順番に。
主人公のトオルとリツコが冒険に出て、敵と戦う物語。まぁ、敵は大体嫌いな先生とか、意地悪な近所の犬とか。ギャグ混じりに書いてある。
そこだけ読んでいって、何となく思い出した。
…確か、俺が一度だけリツコに告白した時、主人公トオルは、ハートの形の花をリツコにプレゼントするってなことを書いた気がする。
しかも告白は適当に流されてしまって無かったことになり、それきり交換ノートも終わってしまったのだ。
なんだか情けなくて恥ずかしい記憶だな。
何だって今になって蒸し返したんだよ。最後の最後にからかう気か?
俺は見覚えのある最後のページをめくる。
次の瞬間、俺は走り出していた。
「バカ」
そう呟いて。
誰もいないはずの3-4の教室に足を踏み入れる。そこにはリツコがぼんやり立っていた。
「リツコ?」
「…トオル?」
「直接言えって、お前」
俺の心臓はバクバクと跳ねている。
ちょっと俯いてから、リツコはこっちをはっきり向いて嬉しそうに微笑んだ。
「へへ、良かった、気付いてくれて」
●●
俺たちが高校を去る今日、俺たちは初めて手を繋いで校門をくぐる。
ノートの一番新しいページには、大きく一つの文章が殴り書きされていた。
「勇者トオルにもらったハートのお花を大切に大切に育てていたリツコは、最後に笑った教室で、ずっとずっと愛する彼の帰りを待っていました」
END
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