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「やめろ!来るな、来るんじゃない!殺すぞ、本当に殺すぞ!」
やはり、様子がおかしい。
警官は銃撃に警戒しているため先ほどから一歩として動いていない。それでも、何かが近づいている事に恐怖している。
「来るなぁぁぁ!」
-パンッ・・・パンッ・・・
次の瞬間だった。犯人は絶叫しながら警官に向かって2発発砲してきた。
しかし、発砲したのは警官達の足元だったので怪我人はいなかった。
「ひぃ・・・来る!ドールマスターが殺しにくる!死にたくない!」
「死にたくなければさっさと銃を下ろすんだ!」
「ひ、ひぃぃぃぃ!」
-パンッ
大量の鮮血が部屋を染め上げる。
犯人は自ら頭部を打ち抜き、命を絶った。
「本部に連絡、犯人は自殺した、と」
自殺した男の顔は何かから解放された歓喜の顔だった。しばらくすると家の中に刑事や鑑識が入り部屋の中の様子や指紋の採取に専念していた。
「自殺したのは大橋五郎、暴力団です。数日前に事務所から行方をくらましていました。被害者の女性は面識もないと証言していることから、無差別な強盗ではないかと・・・」
タバコを1本くわえた警部は、そうか、と言うだけでそれ以上は何も語ろうとしなかった。
「しかし、ドールマスターが来る・・・と言うのは何かの暗号か何かですか?警部はご存じないのですか?」
「知らないな。大橋は麻薬とかやっていたんじゃないか?だから幻覚に追われて自殺を図った。そんな感じだろ?」
「典型的な推理ではありますが、色々と疑問点が浮上してきます」
「確かに。だが、これからその疑問点を紐解いていくのが俺たちの仕事だ」
警部はそのままパトカーに乗って現場を離れていった。
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