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「・・・って事件なんだけど、恐くねぇ?」
吉田亮平がテンション高く話すことでその緊張感も総崩れになる。ワックスで固められたツンツンの金髪に、ドクロや十字架等のネックレスやピアス、黒のタンクトップとジーンズ。そんな、一見不良のような青年がいる部屋はカーテンを閉めきられ、蝋燭のユラユラとした火の灯りが数本立っている不気味な所である。大学の奥にある古びたサークル棟、今では運動部・文化部を含めて人が少ないサークルや部費の少ないサークル、まともな活動をしていないサークルといったいわゆる落ちこぼれの吹き溜まりの場所がこの旧サークル棟である。数年前に新しいサークル棟が出来たのだが、移動するためには運動部の場合、大会に出場し成績を収めることが。文化部は毎月サークルの会報を提出する事が、新サークル棟への移動条件となる。
「そんな話を会報に書いて、提出したらいいんじゃない?」
亮平に話し掛けるのは、眼鏡をかけた典型的な文学少女の吉野麻美だった。
「あー、ダメダメ!俺たち会報まともに出してないし、出した月も人気は出ない。ダメなサークルは何やらせてもダメだってイメージはなかなか拭い去れないのよ!」
「しかし、いい加減ヤバいよなぁ。今年の夏でここ取り壊すんだろ?って事は俺たちも集まる場所が無くなるって事でサークルも自然消滅・・・」
背の無い椅子に座っていた、男が椅子の後ろ足2本を器用に傾けブラブラしながら話をしていた。
「ちょっと信二、縁起でもない事言わないでよ!」
ワンポイントの白のTシャツに濃い青のジーンズとラフな格好をしているのが中井信二である。
「でも、いいよなぁ。俺は彼女いないけど、麻美ちゃんと信二は幼なじみ!家も近くで会おうと思えばいつでも会える。麻美ちゃんは毎朝信二を起こしに・・・」
―パシンッ!
信二が身近にあったパンフレットを手に取り亮平の頭を思い切り叩く。
「ってぇぇぇ!」
「余計な事を言うなっ!そんなんじゃねぇよ!」
「ムキになってるところがあ・や・し・い・ぞ?」
亮平がニヤニヤしながら頭をポンポンと叩く。亮平と信二のこうした関係も決して短いわけではなく、中学からの同級生で8年近くの付き合いになるのだ。
「そういえば、耕太と日向のカップルは来てないなぁ・・・」
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