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しかし、今から一年前の事だった。帰省していた美智子は何者かによるひき逃げに遭い、亡くなってしまったのだ。だが、事件は全く解決されなかった。問題の美智子の遺体がどれだけ探しても見つからないからだ。ついに事件は犯人も遺体も見つからないという前代未聞の迷宮入りとなってしまった。
先程の小競り合いから約10分、重苦しい空気を吹き飛ばそうと麻美が口を開く。
「ねぇねぇ!さっき亮平が話してたことって本当のことなの?」
「本当かどうかはわからんが、兄貴の友達が警官で、そんな話をしてたんだ」
「ならさ、これ調べてみない?」
麻美の一言に信二も亮平も驚いた。いつもは消極的でみんなが調べる内容しか調べないのに、今回は自ら調べたいといってきたのだ。
「どうしたんだ?麻美」
「そうだよ、いつもはそんな事言わないのに・・・」
次々と出てくる疑問の声。
「いいじゃない!たまには私が提案しても!」
二人ともため息をつきながら、今回の調査を始める事にした。
夜道を一台の車が走っている。車内には男が一人、耕太だけである。
この道は夜になると人も車も少なくなり、しかも見通しのいい直線ということで随分走りやすい道なのだが、それ故にスピード違反や事故も多発しているスポットである。
「母さん?もうすぐそっち着くから晩飯よろしく。」
携帯片手に耕太は運転をしているが、今まで事故も起こしていないし、違反などで捕まったり、点数を引かれたことは一度もなかった。今回も大丈夫だろう、と思いながらハンドル片手で運転をしていた。
-ピッ
携帯を切り、誰もいない助手席へ放り投げた。
-ピリリリ・・・
再び耕太の携帯がなる。そして、携帯には母の名が刻まれていて何の疑問も抱かずに電話に出た。
「あ、もしもし?なんか言い忘れたことでもあった?」
しかし、電話に出ない。
これはおかしいと耕太も思った瞬間
-ザァァァ・・・ザァァァ・・・
「うわっなんだ?ノイズが」
思わず携帯を手放す。しばらくして携帯は待ち受け画面へと切り替わり、再び静かな車内へと戻った。
「なんだ?いったい何が?」
耕太は嫌な予感がして母親に電話をする。
「もしもし、さっきの電話なんだけど電波の調子が悪くて聞き取れなかったんだけど・・・」
『電話?こっちからは掛けてないけど、どうしたの?』
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