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(そんな訳が無い。たった今掛かってきたんだ。分からない訳が無い!)
耕太はぞっとした。しかし、親に心配を掛けまいと耕太は電話を勘違いとして処理し電話を切った。
(きっとこの所のバイトと講義の連続で疲れてたんだろ)
軽いため息を吐きながら携帯を再び助手席に置き、車内の違和感に気付く。
後ろに・・・誰かいる。
(誰だ?いったい誰だ?)
静かに後ろを振り向く。そこには血まみれのキャミソールを着た、髪の長い女性が座っていた。そして、その顔にはピエロの面がされていて顔は分からなかったが、それがかえって不気味さと恐怖を増していた。
「う、うわぁぁぁ!」
耕太はたまらず急ブレーキを掛ける。響き渡るタイヤと地面をこする音、激しい衝撃、鼻にツンと臭うゴムの焼けた臭い。一斉に耕太に襲い掛かる。
しかし、すでにピエロの姿はなく、後部座席は今まで誰一人としていたような痕跡は見当たらなかった。
「い、一体どうなってる。あいつは何者なんだ」
額からは冷や汗が顔一面を滝のように流れ、心臓の鼓動は今にも破裂せんばかりに高鳴っている。
「とにかく、ここから急いで逃げよう」
車は再び走りだし、耕太の実家へとむかった。
「ただいまー」
玄関を開けると、いつもなら明るいはずのこの場所が何故か暗い。電気の点け忘れだろうといつもなら思っているところだが、さっきのピエロの女といい、携帯電話の件といい、何だか気味の悪い一日だった。だからこそ慎重に家の中へ足を運んでいく。
「父さん、母さんいるんだろ?返事してくれよ」
玄関から大声で叫んでも返事が無い。耕太は仕方なく居間の方へ足を運ぶ。
田舎の、しかも昔から建っている家だけあって中は広く、息子の耕太が生活しても余りあるくらいである。
明かりがポツリと見えた。あれは確かに居間の方だ。もう、ひょっとして寝ていたのだろうか、だから明かりも点けずにいたのかもしれない。
居間につながる扉をそっと開けて覗くとそこはいつもの光景。
父親はテレビを見ながら、缶ビールを飲み、母は食器を洗っていた。
「あら、帰ってたの?」
「帰ってたの?じゃないよ、まぁいいや晩飯なに?」そういうと食器を洗っていた手を止めて、お盆を持ってきた。
「カレーかぁ。ま、いいや腹も減ってたし。いただきます」
しかし、口にカレーを運んだ瞬間耕太はカレーを吐き出した。
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