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どこから持ってきたのか、ホワイトボードを広場の隅に立てて講義モードに入る田中先生。
座って、と促されたが近くに椅子らしきものは何も無いため、俺は仕方なく地面にダイレクト正座をすることに。
傍から見たら厳しく指導する教師と出来の悪い生徒に映るかもしれない。
出来が悪いのは事実なんで何とも言えませんけど。
「さて。講義の前にだけれど、まず不洞さんは魔法についてどのくらい知っているのかしら?」
「そうですね……系統は多くありますがその中でも効果範囲と汎用性に長けたミッドチルダ式、近接対人戦闘に特化した古代ベルカ式、さらにそれをミッド式と融合させた近代ベルカ式の3大系統に分類される……ということくらいは、常識として」
「全く知らないということね、オーケー」
少しくらい関心持ってくれてもいいのではなかろうか。完全スルーはちょっと心にクるものがある。
「まず魔法と言うのは、魔素の結合によって発生した魔力と呼ばれるエネルギーを利用して起こす現象全般の事を指すわ。あ、魔素についても説明が必要かしら?」
「いえ、それは本当に知ってるので大丈夫です」
旅の最初にカナッペから受けた説明を思い出す。
確か魔素ってのは自然界や生物の中に存在する神秘的なエネルギー、だったかな?
んで魔法使いはこの魔素を外部から取り入れたり、体内で生成して調達し魔法を使うとか何とか。
世にある数多のアニメや漫画でも似たような設定が存在するので非常に覚えやすい。
むしろもっとオリジナリティが欲しくすらある。
魔素さんにはもうちょっと頑張ってほしい。
「それでこの魔力を直接的なエネルギーとして使うこともできるし、術式によって炎や電気など別のものに変換することもできる。高位の魔法使いともなれば、物理枠を超えた現象を起こすことだって可能よ」
「ほうほう。例えばどんなのです?」
「こういう感じの魔法ね」
先生がウインクしながらパチンと指を鳴らす。
なんだよちょっとドキっとするじゃねぇかよ、なんて呆けていた俺の目の前の空間が青白い光を放ち始め、そこからハンドボール程もあるサイズの岩が出現した。
宙に放り出された岩はそのまま重力に引かれ、鈍い音を立てて地面にごっつんこ。
ふざけてるとお前の頭を叩き割るぞ、という暗黙のメッセージなのだろうか。
「転送魔法……」
「そう。こういった物理枠を超えた複雑な現象は念や気、心力では起こせないわね」
なるほどねぇ。なんとなく魔法がどんなものなのか分かってきた。
直接的な攻撃手段としても使えるし、自身を補助したり特殊な現象を起こして戦況を有利にしたり。
まさに何でもできる万能の能力。
超人同士の戦いにおいて、これが使えるのと使えないのとでは確かに大きな差があるのだろう。
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