4人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
全て幸せと思えた。
まだ人だった頃、全てが大切と思えた。
その男は、感情的だった。
喜びも、悲しみ泣く事も、楽しく笑う事も、そして怒りさえも。
その男は、その怒りで幼稚な男を悪と捉え罰した。
その怒りが後に後悔になると気づかず。
その時から少しずつ、その男も気づかない程に少しずつ、その男の大切なものが、その男の幸せが失われていった。
そして、その男は気づいた。
その大切な全てを失った事を。
その男の幸せが失われた事を。
感情を大事としてきたその男は、その感情故に全てを失ったのだ。
全てを失い男は虚無に堕ちた。
失うものは何もないと思い、死をもなんとも思わない程に
死にゆく男の目前には常に大切な人が娘達が浮かんでいた。
そして、その大切な人や娘達が死をも止めたのだ。
しかし、それはその男の死を止めたのではなく、生活の潤いを守ろうとしただけだった。
男は絶望した。
もう娘達とも会う事が出来なくなった。
今度こそ失うものは無くなった。しかし、大切な家族の死を目にした男は、死のうとは思わなくなった。
ただ生きる事に虚無を感じ、苦痛を感じながら
最初のコメントを投稿しよう!