魔王~誕生~

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全て幸せと思えた。 まだ人だった頃、全てが大切と思えた。 その男は、感情的だった。 喜びも、悲しみ泣く事も、楽しく笑う事も、そして怒りさえも。 その男は、その怒りで幼稚な男を悪と捉え罰した。 その怒りが後に後悔になると気づかず。 その時から少しずつ、その男も気づかない程に少しずつ、その男の大切なものが、その男の幸せが失われていった。 そして、その男は気づいた。 その大切な全てを失った事を。 その男の幸せが失われた事を。 感情を大事としてきたその男は、その感情故に全てを失ったのだ。 全てを失い男は虚無に堕ちた。 失うものは何もないと思い、死をもなんとも思わない程に 死にゆく男の目前には常に大切な人が娘達が浮かんでいた。 そして、その大切な人や娘達が死をも止めたのだ。 しかし、それはその男の死を止めたのではなく、生活の潤いを守ろうとしただけだった。 男は絶望した。 もう娘達とも会う事が出来なくなった。 今度こそ失うものは無くなった。しかし、大切な家族の死を目にした男は、死のうとは思わなくなった。 ただ生きる事に虚無を感じ、苦痛を感じながら
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