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今、俺は病院にいる。
清潔な白い病室。
しかし、ベットにはカーテンが引かれ、患者の姿は見えない。
「花野さん・・・」
朝の連絡で驚いた。
なんでも、昨日花野さんが通り魔に襲われたらしい。
幸いにも軽い怪我で済んだらしいが、ひどいショックを受けているとの話だった。
放課後、甲斐に病院と病室を聞き出し、今に至るわけだ。
「私ね、顔に傷がついちゃたの。けっこう大きなね。カッターでね、切られたのよ」
「そんな・・・」
「だからねっ・・・一昨日の話なかった事にしてねっ・・・ひっく・・・こんなんじゃ、達也くんに、ひっく・・・釣り合わないからっう、うあああん!!」
泣き崩れてしまった。
どう言葉をかけていいかわからなかった。
「ぐすっ・・・ご、ごめんね。泣いちゃって。でも、今は一人にしてくれないかな」
「わかった・・・」
暗い気持で病室を出た。
自分を好きと言ってくれた女の子が悲しんでいるのに、慰めの言葉一つかけられないとは情けない。
無力さにさいなまれながら、病院をあとにしようとした。
が、そうはいかなかった。
「ふふふ・・・達也ぁ」
待ち構えるように、病院の入り口に成美が立っていた。
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