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ふと気がつくと、彼は暗闇の中にいた。確か俺は…?
起き上がろうとするも、体を何らかの樹脂でがっちりと固められていた。
振り向くとその先には石灰化した生き物の死骸。
4対の足を持ったそいつは、その華奢な指を天へ向け、獲物の首に巻きつける尾と産卵管をだらしなく垂らしていた。
彼は、自身の身に起こった恐るべき事態を悟った。
最早誰にも彼を救う事は出来ない。残された命も長くは無いだろう。
絶望や失望を感じる余裕は与えられなかった。胸の奥に激痛が走る。
ついに命の灯し火尽きる時がやって来たのだ。
薄れる意識の中で彼は、自身の胸が内側から食い破られる音を耳にした。
肉の檻から解き放たれた“エイリアン”は、誕生の歓喜に咽び泣く。
虚ろな眼窩を虚空へと向けて。
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