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やはり気のせいだったか。
艇内の“青年戦士”は武器を収めた。
あの過酷な儀式を終え、大事な兄弟を失った後だ、やはり疲れているのだろう。
そもそも“蟲”が逃げるはずなど無いではないか。
己に言い聞かせながら、青年戦士は眼前の生体培養槽を覗き込む。
巨大な水槽の中は保存液で満たされ、中央に小さな氷の塊が浮かんでいる。
地球で言うところの恐竜によく似た形態をした氷の塊は、長い尾と6本の肢を丸め、更に縮まって眠っていた。
彼らが乗る小型艇は、従来は幼虫の状態でしか保存できなかった“女王”を培養槽の中で安全に保存できる最新型だ。
今回の儀式の結果として女王の胎児が得られた為、このように冷凍状態で水槽の中に封印し母星へと輸送する事となった。
培養管の護りは鉄壁である。非力な蟲どもの幼虫や女王の胎児ごときに破れるはずがない。
万一逃げ出したところで、こちらは儀式を終えたばかりの強者揃い。
敗北などあり得ず、戦士に逃走などは勿論ない。
青年戦士には、女王が水槽の中で安らかに微笑んでいるように見えた。
今、女王はどのような夢を見ているのだろう。
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