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そのけたたましい呼び出し音で、戦士は飛び起きた。
御得意様の長老、直々のお呼び出しのようだ。
稼ぎ時もひと段落した久々の休暇だったのだが、と愚痴る事もない。
寝台から降りた小柄な戦士は、腰まで長く伸びた赤い髪を留め、鎧を着、身支度を整える。
戦士は自室を出、長老の待つ“対面の間”へと向かった。
対面の間に入り、戦士はマスクを外して長老へ敬意を示した。
戦利品の数々を眺めていた長老は振り返り、戦士の挨拶に応じて軽く頭を下げる。
実のところ、戦士はこの部族の出身ではない。装飾の意匠も異なれば、肌の色も同じではない。
にも関わらず敬意を払うのは、基本的に彼らが礼儀を重んじる種族だからだ。
今、かの長老殿の表情は曇っていた。あまり良い話ではないらしい。
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