遭遇

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 掃除屋は手裏剣の事など構わず、上半身だけでもがく蟲を安全靴で踏みつけ、左手でその首を掴み、力任せにもぎ取った。 酸が吹き零れ、床を溶かして有毒な蒸気を生み出した。  粘着液が完全に固まる頃には、既に掃除屋の狩りは終わっていた。  あとはこいつだけだ。掃除屋は迷彩を解き、拘束されているその巨獣の前へと立つ。 姿も見えず、得体も知れぬ不気味な変異体。 全身を粘着液に包み込まれているにも関わらず、怪物は微かに蠢いていた。 これだけでもこの獲物が凄まじい怪力の持ち主なのがうかがえる。 ブレードで切り刻もうか。電磁砲で撃ち抜くのもよい。が、果たしてそれだけで死ぬだろうか。 急所がわからぬ以上、迂闊に手を出すべきではないだろう。 掃除屋は歯を鳴らしながら、慎重にこの怪物の処刑法を吟味していた。
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