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これは、日本の誰ひとりとして知らない日、時間、場所で行われている世界会議である。
出席国は約190ヶ国。北の大国から南の小国までの各国首脳がドーナツ型のテーブルを囲むようにして座っている。ずらりと並んだ黒い革張りの椅子に、テーブルには三角錐型のネームプレート。スーツや民族衣装に身を包んで難しい顔をしている。
しかし、唯一ひとつだけ空席があった。
【Japan】ジャパンである。
―――――
「日本の……必要性?」
【Qatar】カタールが先程唱えられた【America】アメリカの言葉を復唱する。
【America】は何も答えず顔の前で手を組んでいるだけだ。
「そうです」
代わりに隣の席の【Britain】イギリスが口を開いた。彼らは歴史的な発言力を誇る2大国家の代表で、この世界会議においてもリーダーとその右腕のような立場にいる。
「皆さんもこれまでの経験上ご存知でしょうが、日本は孤立した島国で何かと不便が多いんです。輸送費など馬鹿になりません。さらに今は景気が低迷しています。他の国に与える被害は甚大でしょう」
「それで何が必要性の話になるの?」
【France】フランスが言った。
「……日本の貿易法を知っているか?」
説明を買って出たのは【Canada】カナダだ。
「え? 貿易法? あー……あの……加工貿易ってやつ」
「そうだ。あれは貿易摩擦が半端じゃない。向こうの黒字が大きすぎてかなり不公平になるんだ」
「バランスがとれてない?」
「そういうことだ」
そして【China】チャイナの発言が一気に会議を押し進めた。
「で、だからって日本をどうするんだよ」
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