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それから先はあまり覚えていない。確かなのはローランを中心とした四人が土人形を無事に撃破したということだ。俺がなにもせず後ろでうろうろしていたのは言うまでもない。
「零点確定……」
俺はさっき筆記試験が終わったときにもらしたのよりさらに沈んだ調子で言った。今度は冗談交じりに言える余裕も残りカスすら消え去った。
誰もなにも言わない。勝ったというのに空気は重く垂れている。そしてその気まずい雰囲気は冷たく鋭い視線となってすべて俺に注がれていた。
まさか、長い間に魔導の使い方を忘れ、挙げ句発動できなくなっているなんて! 三つの科目のうち二つが零点である。どんな僥倖の持ち主とてこれでは一縷の救いも望めまい。不合格は確実だった。
一同はすでに剣術試験へ向かっている。彼らは光を受けて又それに向かって歩いているように見えた。しかし自分だけはそれによっておこった影に包まれて項垂れている。この間に深く幅広い谷が横たわっている。どんなに強く跳んでも渡れるようなものではない。俺はその岸に一人だけ取り残された。そんな気分だ。
「……次、行こう?」
唯一そうやって手を差し伸べてくれたのはフェリアであった。俺にこれ以上試験を受ける意味はない。しかしなけなしの意地があった。このまま引き下がれるか。その一心が俺を動かした。ついでに言うとフェリアの厚意も強く働いていたわけだが……。
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