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剣術。正直な話、これ以外に俺が点数を稼げる項目はもとよりなかった。
そして、これ以上いくら点数を獲得しようが、何の意味もない。けれども、ここまで舐められたまま逃げ出すのは情けないなんてレベルの話じゃない。俺に向けられる視線は相変わらず冷たいものだったが、俺は耐える事を決めた。
試験会場は先ほどと変わらずグラウンド。各人に訓練用の木の剣が配られ、内容が説明された。
ルールは決して難しくなく、というか至って単純だった。形式は一対一の総当たり戦。勝ち数の多さの他、試合中の立ち回りの良さで点数如何を決定するという。
俺の初戦の相手はヒルトマンだった。体格のおかげか、彼の手にあるもとからショボい訓練用の剣が、ただの棒きれに見える。
「おいおい、お前まだ帰ってなかったのかよ」
「……悪いかよ」
「別に? ただ痛い目を見るまえに逃げたほうが身のためなんじゃないかと思ってな」
おそらくこの男は、さっきなにもしなかった俺を疎ましく感じていると同時に、絶好のカモだと狙っているのだろう。しかし、そうやすやすと踏み台になってやるつもりもない。
開始の合図の笛が鳴った。
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