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言い忘れていたが季節は春。窓から差し込むはうららかな陽射し。机の上の答案を暖かに見守るそれは、俺の白紙の解答用紙をきれいに照らしていた。もちろん紙が文字通り真っ白というわけではなく解答欄に何も書いてないという意味だ。って言わなくてもわかるか。まあそんなことはどうでも良く──。
「そこまで。ペンを置いてください」
決して短くはなかった考査時間は、俺が答案に一文字を書き込む前に過ぎ去ってしまった。
「零点確定……」
「うわっ、大丈夫!? なんか心なしかすごくやつれてるよ!?」
フェリアは机に突っ伏している俺を見て大げさに驚く。俺は力ない声ながらも大丈夫だと答えようとしたが、それより先に声が聞こえた。
「まあどうせボロ負けだったんだろう。気にするな」
「うぐぐ……」
当たってるが、こいつに言われると猛烈にムカつく。
「ま、まだだ! まだ試験は終わってねえ!」
「次は魔導試験……か」
「私、ちょっと自信ないかも……」
次で巻き返さないと不合格は必至……。絶対に落ちるわけにはいかない。緊張感はまた増していた。苦手だからなどとは言っていられない。
それを胸に隠したまま、試験官の案内のもと次の会場へ向かった。
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