4月~幕開け~

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 連れられてやって来たのはグラウンド。端から向かいの端まで六七百メートルはあるだろうか。それが縦横。正直言ってめちゃくちゃ広い。六人(受験者五人と試験官一人)で使うにはいくらなんでも面積過剰だ。上空から見下げたらさぞ寂しいことだろう。 「よし、俺の話を聞けぃ!」  俺を含めポカンとしている受験者たちを尻目に、試験官は俺たちの前に立って口を開いた。ちなみに筆記試験の時とは違う人で、さっきは落ち着いた感じの女性だったのが、今度はいかにも体育教師というような体格のいいおっさんになっている。右目の代わりにひどく目立つ弾痕がある。きっと若い頃は身を顧みず戦う戦士だったのだろう。 「これから魔導試験を開始する。魔導も扱えないやつは聖士官など夢のまた夢だからな、相応の覚悟で臨むがいい。……では試験の内容を説明する」  誰か唾をゴクリと飲む音が聞こえた。 「各々、得意とする魔導は違ってくるだろう。相手に直接被害を及ぼすものもあれば味方を助ける補助的なものもある。そこでだ」  試験官はそこで一旦言葉を切ると、鞄から手のひらに乗る大きさ土人形を取り出した。装飾の類いは一切無いただ土で人型を作って焼いただけの代物。  それで突然「ハッ!」と叫んだかと思うと、土人形が青い光を発しながらむくむくと大きくなっていく。試験官と同じくらいの背まで伸びると止まった。なかなかの長身である。 「諸君にはこいつを『魔導のみを使って』倒してもらう。見た目に反して手強いぞ、間抜け面と思って油断するなよ。ただし、五人で協力してやるんだ。補助魔導が得意なものは出来る限りのサポートをし、攻撃が得意ならば言わずもがなだな。作戦を決めるなら今のうちだ。撃破への貢献度如何で点数をつける。もちろん倒せないなんてことは想定していない。質問はあるか? ないな。よし、あと三分したら始めるぞ!」  まだ何も言ってないんだが。次から次へとよく喋る人だ。  それはさておき、これは少しラッキーかも知れない。俺の魔導が不十分でも立ち回りをどうにかすれば点数が入るかも知れない。俺は覚えず拳を握った。
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