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「おい、作戦会議だ!」
一人の男が言った。年は俺より二三上といったところか(ちなみに俺は十七)。名札にはグラット・ヒルトマンとある。
「作戦ったって、具体的にどうするのさ」
そんな声があがるのも当然。俺はヒルトマンがどんな案を出すのか少し期待していたのだが、彼は途端に言葉に詰まってしまった。どうやら「作戦会議」という単語に酔っていただけらしい。
「……まずは各人の得意な魔導を知らねばな。それを土台に誰がどんな役割を果たすか、話はそれからだ」
静かに口を開いたのは、筆記試験の直前に俺が話しかけた、あのムカつくやつだった。名札を見たらアイラ・ローラン。
ローランの言葉を聞いた皆は、急いで誰の魔導がどんなものであるかの確認を始めた。
「俺は攻撃にいくぜ。この日のために特訓してたんだ」
そう言ったのはグラット・ヒルトマン。手のひらから火球を出してみせた。こんなのはまだ序の口だという顔をしている。
「あ、ぼ、僕は得意なのとかは無いですが、い、一応それなりのことは出来ると思います……」
丸メガネをかけたいかにもがり勉という風体の男。腕が邪魔で名札が見えない。
「私は人の肉体能力を限界まで引き出すことが出来るの。ちょっとだったら傷の治癒も出来るよ」
とフェリア。指先から蒼い光が発せられている。
「……俺は幻を操る魔導を専門にしている。幻という範疇であればなんでもできる」
と、アイラ・ローラン。半透明の人間が次から次へと出てくる。曰く幻兵というやつらしい。しかも幻といいながら実体があり、動きも複雑かつ軽快だ。その半ば反則気味の術を見て、これなら勝てると皆が沸いた。悔しいが、認めねばなるまい。
「……で?」
「ん?」
「お前はどんな魔導を使えるんだ、ウェルク・シーハンス?」
……えっと。何が使えるんだろう。て言うかどうやって発動するんだっけ。
とりあえず手に力を入れてみる。
「……。……あれ」
何も起きない。
もう一度やっても結果は同じ。……まさか。
「まさかお前……魔導が使えないのか?」
俺は黙っていた。沈黙は肯定として場に答えを与えたらしい。
「……ふん、とんだ足手纏いだな。いいか、俺はお前のような『落ちこぼれ』に足を引っ張られて不合格になる『理由』は無い」
「……なんだと」
俺は憤ったが、反論する術がなかった。
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