悪魔召喚

2/7
787人が本棚に入れています
本棚に追加
/177ページ
5月の田んぼには、青々とした植えられたばかりの稲の苗がきれいに並び、畑の作物は緑の葉を揺らす。 裏は山。表は道路の向こう、田んぼに畑。 そう。思いっきりのどかな田園風景。 冗談じゃないっ! あたし、高真サヤは、今年で17となる、いわゆる女子高生というシロモノだ。 とはいっても、遠すぎる高校には行かずに、この小学校、中学校を過ごした校舎で、高校の教職免許を持つ中学のじいちゃん恩師と1対1の通信教育だ。 あたしはこの状況を打破すべく、いろいろと考えてみた。 そして手に入れたのは一冊の黒魔術の本。 このど田舎の分校の小さな図書室にあったものだけど。 「えーと、なになに?用意するもの、暗い部屋、蝋燭の明かり…」 あたしはそれを声に出して読んで、最初からやる気をなくしつつ、家庭科室に暗幕を引いて、アルコールランプを用意する。 更に読み進めてみる。 「材料、トカゲの尻尾、50…。カエルの肝、100…。100っ?……ふざけてるわね、この本」 あたしは一度、本を投げ捨てて、溜め息を一つ。 そう。あたしのやろうとしていること。 悪魔召喚。 神様がいるのなら、あたしは今頃、こんなところにはいないはず。 悪魔がいるなら、出てきてみやがれということだ。 あたしには、こんなものしかすがるものはない。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!