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ふう、と息をつくと、今度は寂しげな笑みをたたえて篠原は言葉を続ける。
「俺は中学の時にラッパに出会ってな。
下手くそだけど、吹くのは好きなんだ。
別にいい賞をバンバン取りたいとは思わないけど、仲間がいないのはツラいもんだな。」
そう言うと、もう一度拓人に微笑みかけ、篠原は長い廊下を歩いていった。
そう、音楽は一人では出来ない。
あいりと一平の存在を、今一度かみしめた拓人だった。
その存在が、今拓人の前でとんでもないことを言い出した。
「私たちで、この部活を改革するんだよ!」
「あいり~たまには良いこと言うじゃん!
たまには!」
「単細胞に言われたくないわよ!」
「誰が単細胞だ!
この、ゴリラ女!」
「はぁ~!?ゴリラはあんたでしょ?
このゴリラ男!」
「ゴリラ女!」
「ゴリラ男!」
「ゴリラ!」
「ラ~!」
とても高校生とは思えない低レベルな争いの横で、ポカンと口を開けて佇む男が一人。
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