届かぬ声

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コンクールから半月後。 長いかった夏休みも終わり、高校生たちはまた、毎日朝早くから学校に通う日々を送っている。 拓人もそんな高校生の一人で、朝の自主練習に向かうべく、もうすぐ色づき始めるだろう銀杏並木の下をシルバーの自転車で走り抜ける。 夏休みが終わった、と言ってもまだまだ暑い日が続いていたが、最近日が落ちる時間が急速に早くなり、季節は秋であること切に感じたのだった。 9月になって、吹奏楽部も3年生のぬけた新メンバーで活動を始めた。 といっても、活動らしい活動は相変わらずしていないのだが。 秋といえば、文化祭や体育大会など吹奏楽部が活躍する時期なのだが、この弱小部にとってそれらの行事は無関係らしい。 コンクールが終われば、次の本番は卒業式と入学式。 なんとも恐ろしい部活である。
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