届かぬ声

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「西村、朝からうるせえ。」 「もー、おはようくらい言ってくれたらいいじゃない。」 攻撃相手の対応にがっかりした様子で、あいりは拓人の横に並ぶ。 目線を斜め下にずらさないと視界に入らない、小柄な彼女の様子をうかがうと、頬を膨らませながら横目でこちらを睨んでいる。 ベタだ、なんともベタだ。 自転車で20分の拓人に対し、あいりは電車通学だ。 さっき通った銀杏並木の通りにある最寄りの駅から、徒歩5分程度で学校に到着する。 一平は徒歩通学で、5分もかからぬうちに学校に着くが、朝に弱いのか余り朝練に姿を見せない。 ちなみに実家の洋食屋は、駅前にある「なつ亭」である。 「はいはい、おはよう。」 「心をこめてよ、心を。 せっかく今日は拓人にビックニュースを持ってきたのにさぁ。」
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