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「あーもう!!ほんとにくやしいー!!!」
ホールから駅に向かう道でギャーギャー泣き喚くのは、西村あいり。
「頑張ったのによう!報われねぇー!」
同じく、松岡一平。
二人は拓人と同じ高校2年生で、クラリネットパートである。
クラリネットというのは、簡単に言えば黒い縦笛だ。
グラナディラというアフリカのサバンナに生える黒い木が原材料で、黒い本体の上にシルバーのキィがごちゃごちゃと付いている。
先端のマウスピースに葦で出来たリードを一枚つけ、そこに息を吹き込むことでリードを振動させ、音を出す。
吹奏楽で最も使われるのは、B♭(ピアノで言うシ♭の音)を基調とした「B♭クラリネット」で、拓人とあいりが担当する。
一平は、そのB♭クラリネットよりも1オクターブ低い音が出るバスクラリネット担当だ。
オーケストラで言うバイオリンの役割で、旋律を多く奏でるB♭クラリネットに対し、バスクラリネットは伴奏を主とする。
本体も、B♭クラリネットよりも長く、身長が180cm前後の一平にはぴったりの楽器だ。
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