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先程まで口を尖らせていたあいりだったが、ふと神妙な面持ちになってぽそりと呟いた。
「…私たちがなんとかしなくちゃ。」
「はぁ?」
「だから!
私たちでこの部活をどうにかするのよ!」
三人の中で一番小柄で華奢なあいりだが、一度決めたら突っ走る鋼の意志の持ち主で、言い出したら聞かないことを男たちはよく理解している。
「だって、拓人、次期部長じゃない?
部活がこのままでいいの!?」
「う…それは言うな…」
拓人は、最近告げられた避けられない事実に苦い顔をする。
コンクールの三日前、拓人は前部長に呼び出された。
音楽室に繋がる風通りの良い廊下で、窓の外から運動場で練習中の野球部のかけ声やら、ミンミンうるさい蝉の鳴き声が聞こえていたのを覚えている。
「藤澤、次の部長、お前な。」
「ぶ……部長!?」
拓人の首筋に、一筋の汗が音もなくつたう。
おそらく、夏の暑さのせいだけではないだろう。
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