作戦開始!

9/11
前へ
/23ページ
次へ
「そうだ。 お前、毎日真面目に練習来てるからな。 どうせ、コンクール終わってから全員で集まる機会はないだろうから、今のうちに簡単に引き継ぎしておくわ。」 吹奏楽部の花形、トランペット担当だった篠原部長。 この部活にしては珍しく真面目に練習する部員で、よくこの窓の外に向かって練習する姿を目にした。 「そんな顔するなよ。 大丈夫、お前には松岡と西村がいるだろ。」 あからさまに眉間にシワを寄せ、不満丸だしの拓人に、篠原は一重の目を更に細めて声をかける。 風通りの良い長い廊下。 運動部のかけ声や、小鳥のさえずり、蝉の鳴き声、電車の踏み切りの音、様々な音が流れ込む窓の前で、先輩はいつも一人だった。 本当なら、こんな弱小部を自分が背負うなんてまっぴらだ。 しかし、練習する先輩の後ろ姿を思い出すと、断るにも断れなくなってしまった。 「……分かりました。」 「ありがとう、助かるよ。」 渋々承諾する拓人をみて、満足気に微笑む篠原。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加