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仕事3 タンスにアイテム
「――さて。貴方、そこに座りなさい」
「え? ……で、でも……そろそろ急がないと、時間が……」
「私は、貴方に協力したのよ? だったら、私の頼み事くらい聞いてくれたらどうなの?」
女性は、家を去ろうとした私をテーブルに促すと、毒々しい色の飲み物を乱暴に置いた。
「……う、……!?」
「あら? どうしたの?」
「これ、は……」
私は、吐きそうになる程の臭気に、思わず手で口元を塞いだ。
――それは、口にするのも憚られる程の汚水。
黒く濁り、どろりとした固形物が浮いている。
……おおよそ、人間が飲める様なものでは、無い。
「――飲めないのかしら?」
「い、いえ。……飲みます」
ここで背を向けて帰ったら、タンスの中身が元通りにされてしまうかも知れない。
私は意を決して、そのコップを持ち、中身を口に運んで……
「――っ!? ぐ、ぁ……!? げ――げほげほっ!?」
「あらあら、汚いわねぇ」
テーブルに吐き出した汚水は……蠢いていた。
私の口の中も、何かがカサカサと動いている。
……どうやら、成分が汚物なだけでなく、それに好んでたかる生物が含まれていたらしい。
「汚いわね。……そんな汚い子は、さっさと出てってくれるかしら?」
「……ぁ、……うぁ、……!」
私は、お礼の言葉を言うのも忘れて、涙を流しながらその家を離れた。
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