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ふらふらとした足取りで、他の家を回る。
嫌がらせを受けたのは、最初の家だけだけれど……誰も彼もが、プライバシーを侵害する不届き者に対して、冷たい目を向けた。
私はその中で、思いがけず、望んでいた名前を貰う事が出来た。
――疫病神、と
「……どうして、かな?」
やくびょうがみ、やくびょうがみって。
名づけてくれた。そして、何度も私の名前を呼んでくれた。
それなのに――
「……わがままだな、私。……全然、嬉しくないの……」
あと、準備するべき家は一軒だけ。
再び陽が上るまで、まだ時間がある。
だから……少し人家から離れて、木の影に入ると。
「……しくしく……」
眠っている人たちを起こさぬよう、声を殺して泣いた。
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