仕事1 ダンジョン内に宝箱の設置

1/3
前へ
/15ページ
次へ

仕事1 ダンジョン内に宝箱の設置

 ――先にも書いたけれど。  私の第一の力……『地形無効化』は、ただ、「そこに辿りつける」というだけの能力だ。  空があれば、上空に進む事が出来る。  海があれば、海中へ進むことが出来る。  溶岩も死なずに乗り越えられるし、極寒の中でも凍りつかない。  ……でも本当に、ただそれだけなのだ。  何が言いたいかというと……。 「さ、寒い……」  北の大陸『永久凍土の洞窟』内の温度――現在、マイナス十五度。 「この洞窟、確か……歩いて、最奥まで三時間かかる……はず……」  地面や天井のそこかしこに刺々しい氷塊が生え、見渡す限り鏡張りの様になっている洞窟内。    ……青白く広い道は、体感温度を更に五度は下げている気がする。 「うぅ……さ、ぶ、い……!」  吐く息が白い――なんてレベルじゃない。  最早その寒さは、薄着の私にとって拷問の域に達している。  でも、私は凍死したりしない。  凍死はしないから……コートは私に取って「必要ない物」。「必要な物を生成」する『物質創成』の能力では、上着を創ることが出来ないのだ。   「――くしゅんッ!」  くしゃみが、洞窟の静寂を切り裂く。  まだ入り口付近だが、私の声は最奥まで届いているのではないだろうか。 「……うぅ、寒いよぉ……」  ぶるる、と身体を震わせて、一歩一歩奥へと進んでゆく。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加