仕事1 ダンジョン内に宝箱の設置

3/3
前へ
/15ページ
次へ
 来た道を真っ直ぐ戻り、T字路は直進。  入り口から見て左の道を真っ直ぐに進むと、突き当たりに下り階段がある。  全二階の洞窟なのだが……下の階は複雑な作りをしていて……何よりそこから先はモンスターの生息地になっているのである。   「あの、済みません」  階段を下りて、すぐ。  宝箱を設置しなければいけない場所に……全身真っ白な毛をした大型の獣が眠りこけていた。 「その、……どいて、欲しいのですが……」  ……怖かった。その魔物『ホワイトタイガー』は、私の身体の何倍もの大きさがあるのだ。  見るからに隆々の筋骨。その腕で一薙ぎされれば、私なんて全身の骨が粉々になってしまうだろう。  ――それでも、私は死なないけれど。 「――グ、グゥ……」  私の気配を察したか……ぴくりと身じろぎして、炎の様にたぎる目を、私に向けた。 「ひぃっ……!」 「…………」  私は身を竦ませて、身動きが取れなくなった。    ……しばし、見つめ合う。気分は、蛇に睨まれた蛙だ。  がくがくと震えているのは、寒さだけが理由じゃない。  ホワイトタイガーが「ふしゅー」と大きく鼻から息を吐き、獣臭い匂いが私の頬を撫でた。  そんな事はありえないのに……どうしてか、私が食われる想像ばかりしてしまった。 「――あ、あのっ!」  絞るように、何とか声を出す。  すると、ホワイトタイガーは大儀そうに立ち上がり、私に背を向けて……。 「……ほっ」  何とか、その場所を離れてくれた。 「――うぅ……。怖さがなくなったら、また寒くなってきた……っ」  私は肩を抱き、地団駄を踏みながら、「たからばこっ!」と唱える。  そして、すぐさま中身のアイテムも唱えて、 「次っ! 早くしないと、寒くて死んじゃうよぉっ!」  次の設置場所目指して、走りだした。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加