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来た道を真っ直ぐ戻り、T字路は直進。
入り口から見て左の道を真っ直ぐに進むと、突き当たりに下り階段がある。
全二階の洞窟なのだが……下の階は複雑な作りをしていて……何よりそこから先はモンスターの生息地になっているのである。
「あの、済みません」
階段を下りて、すぐ。
宝箱を設置しなければいけない場所に……全身真っ白な毛をした大型の獣が眠りこけていた。
「その、……どいて、欲しいのですが……」
……怖かった。その魔物『ホワイトタイガー』は、私の身体の何倍もの大きさがあるのだ。
見るからに隆々の筋骨。その腕で一薙ぎされれば、私なんて全身の骨が粉々になってしまうだろう。
――それでも、私は死なないけれど。
「――グ、グゥ……」
私の気配を察したか……ぴくりと身じろぎして、炎の様にたぎる目を、私に向けた。
「ひぃっ……!」
「…………」
私は身を竦ませて、身動きが取れなくなった。
……しばし、見つめ合う。気分は、蛇に睨まれた蛙だ。
がくがくと震えているのは、寒さだけが理由じゃない。
ホワイトタイガーが「ふしゅー」と大きく鼻から息を吐き、獣臭い匂いが私の頬を撫でた。
そんな事はありえないのに……どうしてか、私が食われる想像ばかりしてしまった。
「――あ、あのっ!」
絞るように、何とか声を出す。
すると、ホワイトタイガーは大儀そうに立ち上がり、私に背を向けて……。
「……ほっ」
何とか、その場所を離れてくれた。
「――うぅ……。怖さがなくなったら、また寒くなってきた……っ」
私は肩を抱き、地団駄を踏みながら、「たからばこっ!」と唱える。
そして、すぐさま中身のアイテムも唱えて、
「次っ! 早くしないと、寒くて死んじゃうよぉっ!」
次の設置場所目指して、走りだした。
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