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仕事2 ボスに所定位置についてもらう
魔物の中には、知性を持つ者がいる。
先程の魔物『ホワイトタイガー』は、獣が魔力で成長したものだから、その類ではない。
でも、ここにいるボス……『フリーズドール』は、人間が魔物化したものだから、人間並の知性を持っているのだ。
――それは、冷気が燃え続ける人型の魔物。
ゆらめく炎の青い光が、洞窟を構成する氷塊に乱反射して、眩しく感じられた。
「――そ、そんなっ!? それじゃあ、約束が違いますっ!!」
私の抗議の声が、最奥の部屋に響き渡る。
それを受けても、フリーズドールは大げさに肩を竦めてみせるだけ。
「何、約束を違えるつもりはないのだよ。だが……考えても見てはくれないか? 天使のお嬢さん。
――君が設置した宝箱の中身で、私達が殺されるかも知れないんだぞ? 笑顔で君の仕事を見守ってやれというのは、少々酷な要求だと思わないか?」
「で、でも――それは、約束事ですッ! 初めから決まっている事で、それがなくっちゃ、世界のルールがおかしくなってしまうんです!
だから、私は宝箱を設置して、貴方には所定の位置にいてもらわないと――!」
「勘違いをしないでくれ。約束を違えるつもりはないと、私は言っているのだ。君が、神の使いっ走りという可哀想な身分である事も、私は重々承知しているよ」
「で、でしたら、どうして――っ!」
「気にくわないのだよ。……高みで見物している、君の親玉がね」
と、そこでフリーズドールは、絶対零度の身体よりも尚冷たい、氷の視線を私に向けて。
「――その身体。確か、死なないのだったな?」
「……え?」
言葉の意味を判じかねた私は、急接近する青い炎の意味にも気づけず……。
「……君への八つ当たりを持って、私は気分を沈めよう」
「――――ぎ、……! ……ぃ、ぁ……っ!?」
……道中の寒さが、楽園に思えた。
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