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序文
私には、三つの特殊能力が与えられている。
まずは一つ目――地形無効化。
溶岩地帯や、豪雪地帯。海の底や、空の果てまで。
例えそこがどんな場所であろうと、この世界に存在するのなら、私は辿りつくことが出来る。
そして二つ目――完全言語。
動物や植物。魔物や妖精、果ては悪魔まで。
例え相手が誰であろうと、それが生命であるのなら、私は会話することが出来る。
最後の三つめ――物質創成。
宝箱や、その中身。お洒落な服や、伝説の武器まで。
例えどれだけ複雑な構成のものであろうと、「それが必要だ」と認められたなら、私は創りだす事が出来る。
でも……逆に言えば、私の力はそれだけだ。後は、ほとんど人間と変わらない身。
寿命が無い事も死なない事も、私の仕事を成し遂げるのには、大した支えにならない。
私は、このたった三つの力で、成し遂げなければいけないのだ。
――RPGの舞台設定という、他の誰にも出来ない大役を。
ちなみに、私には名前がない。
自分でつけようと思ったけれど、どうしてか全く上手くいかなかった。
……寂しかった。
誰かに、私の名前をつけて欲しかった。
誰かに、私の事を呼んで欲しかった。
でも――
私にかけられる言葉は、私を厭うものだけだった。
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