月の満ちるまでには‥

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困らせてしまっただろうか、それとも呆れられただろうか‥ 。 唐突な誘いにきっと困惑しているであろう相手の、断りの言葉を待つ間が長く感じられた。 カカシを直視出来ず目をそらしたまま、イルカは曖昧な微笑みを無理やり顔に貼り付ける。 もう今さら改まってお礼など言えるような余裕は微塵も残っていなかった。 「えーっと‥あの…突然変な事云ってスミマセン!!深い意味はないんです、忘れて下さい!」 早口に捲くし立てるように何とかそれだけを口にして、ぺこりと浅くお辞儀するとカカシの脇を足早に通り過ぎようとした。 と、握り締めていた買い物袋が突然軽くなった。 見るとカカシが手を伸ばして買い物袋を掴んでいる。 「一つ持ちますよ。」 今度はイルカが呆気にとられる番だった。 ごく自然な様子でカカシはイルカの手から買い物袋を一つ譲り受けると、いつもの毒気のない笑顔でにこやかに言い放つ。 「ホントにご相伴にあずかっちゃっていいんですか?嬉しいなー、オレ 魚大好きなんですよ。」 そう云って楽しげに歩き始めたカカシの背中をしばし唖然としてイルカは眺めていた。
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