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 何がペナルティだ。僕はこうして感極まって、前後不覚に陥って、なんにもできずに佇んでいる。二人が何をするか、あるいはしたかがわかってしまい、いてもたってもいられない。  のろのろ携帯を取り出して、メーラーを起動する。あて先を『霧島冴子』に指定する。メッセージ欄に手を伸ばしそのまま固まる。 (僕はなにをしようとしている)  今更なにをなそうと手遅れにしか思えぬ。しかし、諦めきれない僕の抑えがたい衝動に指が重々しくも動く。かちかち。体が震える。そうなりながら、なんとか文字を打ち終えた。 『今池袋にいるんだが、お前っぽい人見かけた。もしかして池袋で遊んでる?』  五分経った。返信はない。十分待っても返信はない。やがて三十分が過ぎた。それからしばらく。三十二分経って、メールが返ってきた。 『ん~ん  今日はもう帰ったよ』  空白の多いメールだった。面倒くさそうにキーを打つ彼女の姿が脳裏に浮かんだ。あながち間違いでもなかろう。それからまた半時間近く立ち尽くした。その間、僕の頭の中では数多の言葉で溢れかえった。  別れるべきか、別れさせるべきか。何が原因か、果たしてここは現実か。今思えば冴子は天然というか飲み込みが悪いというか、とにかく挙動の危なっかしい女であったように思う。  今まで愛おしくたまらなかった女が仇敵のようにしか感ぜられない。
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