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さて、そんな心配は杞憂に終わり僕は胸を撫で下ろす。財布の中を思い返し、適当に遊ぶ金があるのを確認すると、有頂天になって池袋に繰り出した。
(よかった。浮気なんて心配のしすぎだ)
その後のことはよく覚えていない。嬉しさと安堵のため、一種ぼんやりとした感覚で過ごしていた。幸福のぬかるみにはまってしまう。山のような心配事から開放された時の幸福感は殊に大きい。ああ、この開放感!
雑貨屋やディスカウントショップのいくつかを回った後、彼女の「疲れちゃったしネカフェに行こう」という提案に従って、北口の、例のネットカフェへと足を運んだ。僕の胸が激しく跳ねる。
店内に入るとエアコンの冷気にまず気を奪われた。汗ばんだ肌に心地よい。店内は薄暗い。入り口のすぐ脇には店内の地図がある。どれほどの座席――このような場所ではブースという、があるかはわからないが、二畳から三畳の個室がフロアの殆どを埋め尽くし、その個室と本棚の間の大きく開いた空間に無駄を無くすためのようにオープン席という、個室ではない席が並んでいる。受付の周辺は青のネオンで飾り立てられている。この店の名前やマスコットキャラクターを象ったネオンが妖しく光る。カウンター近くには貸し出し可能なビデオやDVDなどが陳列されている。その棚の中にはかなりの数のアダルトビデオが混ざっている。
「いらっしゃいませ」
受付の男が言う。金髪で細身の背の高い青年だ。
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