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 ブースに靴を脱いで上がる。座敷型のブースは床から一段上がった場所にあり、履物はブースの下に収納できるようになっている。盗まれる心配はない。座敷の床はウレタンという素材を合皮で包んだシートでできているらしく座り心地は悪くない。壁面に据え付けられているテーブルにはテレビが一台、パソコン本体、ディスプレイが各一台ずつ設置され、そのテーブルの下部の引き出して使う延長テーブルにはキーボードとマウスがある。さらにその下にはゴミ箱と、ちんまりとした金庫が付いている。しきりの上限近くにはパソコンとテレビの設置されているのと同じ規格の台が据え付けられており、そちらには篭に入った二足のスリッパとDVDプレイヤーが一台ある。やはり、しきりは低く、ブース内で立ち上がると、隣のブース内を覗けてしまいそうであった。ドアのすぐ脇には一抱えほどの大きさのクッションが二つ転がっていた。 冴子は座敷に上がるなり寝転がって伸びをした。僕も追ってブースに上がりどかっと腰を下ろした。持っていた荷物はテーブル下の空間に押し込んだ。 息を呑む。店内の雰囲気のためか、冴子のことがいやに艶めかしく見えた。僕は努めて冷静を装いつつメロンフロートを口に運ぶ。二口三口と飲み込み、一心地着いたのを覚え、クッションに背中から沈み込んだ。体が重い。腕を持ち上げるのも億劫だ。目蓋も徐々に力なく下がりだす。どうやら僕も疲れていたらしい。歩き通しだったのもあるが、気苦労もあったのだろう。
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