第1話【飛来】

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 二一世紀、人々はその生活圏の拡大や資材を集めるため、手当たり次第に山を削り森林伐採を繰り返す。  そして今まさに、また一つの緑溢れる山が切り開かれようとしていた。  山の麓には既にトラックが何台も停車し、森の木々は既にいくつかが切り倒されていた。 「おーい、次はこっちの切るぞ! 早くしろ!」  見た感じベテランの雰囲気を漂わせる中年男性が、二十過ぎくらいの新米を怒鳴りつける。  新米の方はしきりに何かを気にするように、後ろを振り返りながら中年男性の所まで来る。 「親方、向こうに石畳みたいのがあったんですけど。なんなんですか?」  今日初めてこの現場に来た新米は、こうして先ほどから嫌になるほど質問をしてくる。 「ん、あぁ。あれはな、古い祠があったんだよ」  親方と呼ばれた中年男性は、思い出すような仕草をして新米の指す方を見る。  そこにはつい先日まで何かの祠があったのだ、所々が腐ってもはや誰も手入れはしていない状態で。 「そんな、大丈夫なんですか」  青年は急に不安になり、先ほど自分がいた方に恐怖の視線を送る。  祟られる、などと非現実的なことを考えているのだろう。 「大丈夫だって、一昨日作業を始める前に専門家に手順を踏んで移動してもらったから」 「でも、ああいうの最近多いじゃないですか」  そう言う青年が何を考えているか察し、親方はがっはっはっと笑い出す。 「安心しろって、祟りなんざないからよ。俺達もプロなんだ、現場の事くらいしっかり管理してるさ」  親方は青年に道具を渡し、先ほど目星を付けた木を手で叩く。 「それよっかほれ、仕事しろ仕事」 「……うぃーっす」  緑溢れる自然の山から、また命ある木々が……一つ失われた。
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