第1話【飛来】

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 財団法人私立八雲学園【ざいだんほうじんしりつやくもがくえん】、それは九十九里浜沿いの太平洋に建設された巨大学園都市である。  幼稚舎から大学院、各スポーツ用施設、更には各専門施設までありとあらゆる施設を学生用に詰め込んだこの八雲学園は、サイズ的には既に都市といっても過言ではない。  一応は学校区、居住区、商店区といったように区分けされているが、世間ではその全てをひっくるめて〝八雲学園〟と呼んでいる。  この八雲学園の東側に位置する小高い山、降流山【こうりゅうさん】の頂に剣術道場がある。  〝紅月剣術道場〟と書かれた木造の門から、今一人の少年が姿を見せた。  この少年は降流山紅月剣術道場の一人息子、紅月 竜斗【くづき りゅうと】である。  一六歳高等部二年で剣道部所属、ちなみに成績は下の上。  若干幼さの残る顔立ちだが、その鋭い目つきと自身に満ちた表情が見る者にカッコいいと感じさせる。  トレードマークは愛用している木刀、常に龍の刺繍の入った袋に入れて持ち歩いているのだ。  八雲学園の制服を着て鞄等を持っているところを見ると、今から登校するのだろう。  時間は六時半、彼の所属する剣道部の朝練は七時からなのでこの時間なら丁度良いくらいだ。  学校区までは徒歩で二〇分、登下校時間は定期的に通学バスが走るのでそれを使えば約十分に短縮できる。  ちなみに通学バスといっても、一般のバスが登下校時間だけ生徒用に明け渡されているだけだ。  この時間帯は生徒手帳さえあれば、無料でバスに乗ることが出来る。
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