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「よう」
「ちぃーっす」
「はよー」
車内に入ると、剣道部も含めた見慣れた朝練組みの顔ぶれが声を掛けて来る。
「おう、席空けてくれ」
「おはよう、今日はいつもより空いてるね」
挨拶を返し、竜斗は荷物が鎮座する席を空けてもらい、獅季はその横で吊り革を掴んで話しかける。
「なんか他の部活は三十分早かったみたいだぜ」
「へぇ、もう夏に向けてメニュー強化してるのかな?」
「どうでも良いけど、赤【せき】先輩が聞いたらウチは一時間早められそうだな」
獅季たちの他愛ない会話から恐ろしいものを想像した竜斗が、ブルリと身体を震わせる。
そんな話をしている内に、バスは学校区の内門【うちもん】に着く。
内門というのは八雲学園の学校区に備え付けられた校門のことだ。ちなみに、八雲学園と日本本州を繋ぐ駅を外門【そともん】と呼んでいる。
奇しくも世間の見解通り、この都市は〝八雲学園〟だと言うことだ。
「さてと、ゆっくり朝練の準備でもするか」
「でも部長辺りはもう来てそうだよね」
楽しげに笑いながら剣道場を目指す竜斗と獅季、その後ろに人影が迫っていた。
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