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現文準備室に着き、
「ここで良いのかな~?」
「あ…はい。多分」
現文の先生が使っている机に書類を置く。
「あ…ありがとう…ございます…」
「いえいえ~」
またも会釈する。今度は何も持っていないから、大丈夫。
「しっかし、よく一人で持ってたね。これ」
俺くらいじゃ、こんなの容易いけど、
頼まれたであろう目の前の彼には大変だろうに。
「私(わたくし)しか居なかったから…」
自分を私(わたくし)という人、初めて見た。
「誰が居なかったのか?」
と聞くと
「…」
無言で下を向いたまま。
「…ねぇ、君、何て名前?」
ちょっと気になった。
名前を知りたいと思った。
「俺は…判る、よね?」
俺を知らない奴はここに居ない。
八神兄弟―――カルテットを。
「…カルテット、ですよね?」
「そう。俺はカルテットの八神北斗」
「八神…北斗君?」
「そうそう。で、君は?」
「私は…
此花彼方と申します」
奥ゆかしく、名前を言い、お辞儀する。
「此花彼方君…か」
珍しい苗字だな~。
「それじゃ…」
「あ、待ってよ」
行こうとする此花彼方の腕を掴む。
「何か困った事があったら、いつでも頼って良いぜ」
何だが
面白そうな予感がする。
そう思ったから
此花彼方にそう言った。
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