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「あの……」
男装しているのだから声を低くして話す。
声もこれまた美声で、聞き惚れてしまう。
目も細めなくてはと、目を細める時音。
「あっ!
すみません。今は文久3年で此処は京都ですが……何故…?」
「すみません、私は田舎から旅をして来まして…長く旅をしていましたから忘れてしまったんですよ……」
困ったような顔をすれば、女はコロッと信じた。
「まぁ……まだお若いのに旅して来たんですか、大変ですねぇ」
「いえいえ、体力には自信ありますから。心配して下さってありがとうございました。それでは」
微笑みながら女と別れ、時音は町を歩いた。
(今日は何処に泊まろうか……)
幸い鞄の中にこの時代のお金が入っていた。
元いた時代は夕方だったが、この時代ではまだお昼過ぎだ。
(何をするか……)
暫く町を歩いていると、楽器屋が目に入った。
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