胸の傷と、仕組まれた偶然

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「…――ヨギ様」 「禍染(かそめ)か……」 闇夜の不気味な静けさが辺りを囲んでいる。 漆黒の影の奥に潜んでいる男と女の顔は見えず、声だけが響く。 「吉田様がお見えになられました」 「吉田…?ああ、僕と似てるあいつか」 男は嗤い、顔を歪める。 その顔は少し自嘲しているようにも見えた。 「総司」 「ん?何?」 「前から気になってたんだけど、その胸の刀傷っていつやられたんだ?大分古いようだけど」 平隊士の稽古が終わった後、着替えている時に鈍感無神経な平助が沖田の胸の傷を差し、思ったことを素直に聞いた。
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