胸の傷と、仕組まれた偶然

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「7日振りですね、おふたりとも」 出入口の扉に背を預け、腕組みをしながら綺麗に微笑む美女のような少女。 「とっ……時音っ!」 「久しぶりだね、時音ちゃん」 「はい」、と柔らかく笑いながら沖田のもとへ来た時音は、目を伏せてそれとは別の笑みに変え、沖田にゆっくりと顔を近づけて耳打ちした。 「近藤さん達に会った後、私の部屋に来てください。お話があります」 艶のある透き通った声で囁かれ、その声に背中を撫でられたような感覚に襲われ、ゾクリとする。 「では、私は近藤さん達に戻って来たことをお伝えして来ますので、お先に失礼します」 「おお、そっか。じゃあ後で何処行ってたのか聞かせてくれよー」 「わかりました」 さっと後ろに向き直った反動で、時音の長く綺麗な漆黒の髪が宙を翔ける。 歩く度に宙を浮遊する毛先は、窓から入る光できらきらと星のように瞬いていた。 「相変わらず口調がころころと変わるよなー、時音は。まぁ面白いからいいけどさ」 「……」 平助はただ自分の胸三寸を言っただけのようで、沖田からの返事がなくても気にはしなかった。
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